原文
さして行く
竹の弓こそ
朽ちにけれ
かかしのもとに
身をば置きつつ
人物
宍戸藩主。天狗党鎮撫のため水戸へ向かうが、幕府に疑われ切腹した。 天狗党そのものの武闘ではなく、事件の渦に巻き込まれた支藩主。鎮撫のために出たはずの道が疑いと処罰へ変わり、放たれる前に朽ちる竹の弓という比喩に、果たされなかった使命の虚しさが残る。
現代語訳
射るために向かうはずだった竹の弓は、案山子のそばに置かれたまま朽ちてしまった。
詩の説明
頼徳の歌は、力を振るえなかった者の辞世として読むと深い。竹の弓は、使命を果たす前に置き去りにされた自分自身でもある。案山子のもとに置かれたまま朽ちるという像には、武勇ではなく、動くことを許されなかった無念がある。
背景
宍戸藩主・松平頼徳は、天狗党の乱を鎮めるため水戸へ向かったが、幕府から天狗党に通じたと疑われ、切腹を命じられた。直接の天狗党員ではないが、この事件が支藩主の命まで奪ったことを示す人物である。